■ドラム式洗濯機における石けん使用方法と洗浄力についての実験[1]
太陽油脂株式会社 家庭品販促・開発部
●はじめに
近年、従来の全自動洗濯機と比べて、節水、省エネを謳(うた)うドラム式洗濯機が宣伝され、家庭に普及してきました。2005年度の日本石鹸洗剤工業会の調べでは、ドラム式洗濯乾燥機の普及率は8%となっています。
しかし、全自動洗濯機からドラム式洗濯機に換えた場合、洗浄時の水量表示がないため、石けんの使用量がわからない、また、機種によっては「粉石けんは使えません」と表示してあるため、使用者からはとまどいの声が上がっています(表1)。
そこで、一番話題を呼んでいる機種のドラム式洗濯機で粉石けん、液体石けんを使って洗濯実験をし、その結果(石けんの使用方法、洗浄力、適正使用量)と今後の課題を報告します。
表1 取扱い説明書に表示されているドラム式洗濯機の温水機能と石けんの使用法
| メーカー名 |
洗濯機種名 |
温水 |
粉石けん |
液体石けん |
| SHARP |
愛情Ag+ドラム |
なし |
○
溶かしてドラムへ |
○
溶かしてドラムへ |
| National |
ヒートポンプななめドラム |
30℃、40℃、60℃ |
×
※1 |
○
溶かして洗剤投入ケースへ |
| ななめドラム |
| Sanyo |
AQUA |
40℃・スチーム |
○
溶かしてドラムへ |
○
溶かして洗剤投入ケースへ |
| STEAM LANDRY |
| TOSHIBA |
ザ・フロントインドラム |
ホットミスト洗浄 |
×
※2 |
○
洗剤投入ケースへ |
| ザ・トップインドラム |
| LG電子 |
Slim Drum |
30℃、40℃、50℃ |
○
溶かして洗剤投入ケースへ |
―
※3 |
○・・・使用可 ×・・・使用不可 −・・・記載なし(各社カタログ・06年版取扱説明書より)
※1 問い合わせた結果、「以前はドラムの中に入れてくださいと答えていたが、苦情が多いので、現在、粉石けんは使わないように答えている。」とのこと。
※2 問い合わせた結果、「粉石けんは溶かしてドラムへ」「泡立ちが多いので量は控えめに」とのこと。
※3 問い合わせた結果、粉末石けんが使えるので、液体石けんも使えるとのこと。そのまま、もしくは薄めて洗剤投入ケースへ。
●石けんの使用方法
実験方法と材料
・洗濯機は、National ドラム式電気洗濯乾燥機 NA-VR1000「ヒートポンプ ななめドラム」(松下電器株式会社)を使用。
・粉せっけんは「パックスナチュロン純粉石けん100」、液体石けんは「パックスナチュロンネオ洗濯用液状石けん」を使用。
・洗浄力の測定は、(財)洗濯科学協会の湿式人工汚染布を洗濯物にぬい付けて洗濯をおこない、汚染布の白色度を測定することによって求めた。
【1】粉せっけんの使用法テスト
写真1:ナチュロン純粉石けん100溶け残り
1.洗剤ケースにそのまま入れた場合
実験に使用したドラム式洗濯機は、洗いの注水が洗剤ケース内に流れ、水と洗剤が混ざってドラム内に注入される仕組みになっています。「ナチュロン純粉せっけん100」を〈洗剤ケース〉内の合成洗剤投入口へ、溶かさずそのまま入れて洗濯を行った場合、洗い時の注水で一部溶けてドラム内に入りますが、ほとんどが〈洗剤ケース〉内に残ってしまいました。溶け残った石けんは、すすぎの注水時に再び溶けて、水と一緒にドラム内に入りました。
写真2:水に溶かしたナチュロン純粉せっけんを粉末洗剤投入口に入れる
2.洗剤ケースに溶かして入れた場合
次に、粉石けんを500mlの水で溶かし、〈粉末洗剤投入口〉に入れました。その結果、石けん液は〈粉末洗剤投入口〉を通り、スムーズにドラム内に入りました。その後、洗いの注水とともに〈洗剤ケース〉に残った少量の石けんもドラム内に入りました。
写真3:ドラム内の洗濯物に粉せっけんを振り掛けた
3.ドラム内の洗濯物に直接振り掛けた場合
次に、粉石けんを溶かさず、ドラム内の洗濯物の上に振り掛けて洗濯を行いました。
まず、洗濯物をドラムの中にいれ、スイッチを入れると、洗濯機のパネルに水位と、洗剤量が表示されます。その後、「一時停止スイッチ」を押し、ドラムの回転が止まってからドラムのフタをあけ、石けんが一箇所に固まらないように、洗濯物の上にまんべんなく振りかけて運転を再スタートしました。結果は、ドラムの回転とともに、粉石けんは洗濯物全体にひろがり、その後の注水により溶解しました。
また、粉石けんを溶かして、ドラム内の洗濯物の上に掛けても問題はありませんでした。
以上のどの場合においても、洗濯物への溶け残った石けんや石けんカスの付着、排水フィルターの詰まりはありませんでした。
【2】液体石けんの使用法テスト
写真4:液体石けんを粉末洗剤投入口にいれるところ
「ナチュロンネオ洗濯用液状石けん」を〈洗剤ケース〉内の〈液体洗剤・漂白剤投入口〉に投入してみました。〈液体洗剤・漂白剤投入口〉は容量が少ないため、数回に分けて投入しなければなりませんでした。液体石けんは、洗いの注水によって薄められながらドラム内に入っていきますが、洗剤ケースの中に液体石けんが少し残りました。
次に、〈洗剤ケース〉内の〈粉末洗剤投入〉に液体石けんを投入して洗濯をおこないました。洗いの注水後、〈洗剤ケース〉に石けんの残りはありませんでした。
以上のどの場合においても、洗濯物への石けんカスの付着や排水フィルターの詰まりはありませんでした。
●ドラム式洗濯機による粉石けんの洗浄力
ドラム式洗濯機の説明書には、洗濯量と合成洗剤量の表示だけしかなく、洗濯時の水量表示や石けんの使用量は表示されていないので、メーカーに問い合わせて、各洗濯量時の使用水量を聞き、それから石けん量を考慮して石けんの洗浄力テストを行いました(表2)。
写真5:ドラム式洗濯機による粉石けん使用時のくつ下の洗浄(30g/24L)
 |
 |
| 洗浄前 |
洗浄後 |
その結果、ドラム式洗濯機による石けん使用時の洗浄力は、図1(粉石けん)の通りでした。汚れていない白布(ウエス)の場合、粉石けん濃度0.1〜0.15%までは濃度が高いほど洗浄力はよくなっている傾向があります。やや汚れている(普通の洗濯物に相当)洗濯物は、汚れていないものに比べてやや洗浄力が落ちます。そのため、同一洗浄力にするには濃度をやや高めにする必要があります。図1の洗浄力50%の時の実際の汚れ落ち具合は、写真5の通りです。
図1 ドラム式洗濯機による粉石けんの洗浄率(ナチュロン純粉石けん100)
●ドラム式洗濯機に適した石けん量
ドラム式洗濯機は少量の水でたたき洗いをするので、全自動洗濯機と比べて使用水量が少なく、衣類の傷みが少ないという特徴があります。その分、全自動洗濯機よりも濃い濃度の石けん液が必要です。しかし、洗濯物量が同じ場合、ドラム式洗濯機での石けん使用量は、全自動洗濯機の場合より少なくて済みます。
ドラム式洗濯機では使用水量(L)が表示されず、水位の目安(高・中・低)や洗剤量(例として合成洗剤の量)の目安(1.2杯・1.0杯・0.5杯など)が表示されます。Nationalヒートポンプななめドラムの場合は、4 kgの洗濯物を洗濯機にいれ、スイッチを入れると、水位「中」洗剤量「1.0杯」と表示されます。
各メーカーによって、水位や洗剤量の表示、洗濯物量と使用水量は異なります(表2)。
表2 各社ドラム式洗濯機での洗濯量と洗い水量
| |
洗濯量 |
洗剤量表示 |
洗い水量(L) |
National
ヒートポンプななめドラム |
約8kg |
1.2 |
30 |
| 約5kg |
1 |
24 |
| 約2.5kg |
0.5 |
15 |
TOSHIBA
ザ・フロントインドラム |
6〜9kg |
1.2 |
27 |
| 5〜6kg |
1.1 |
25 |
| 4〜5kg |
1 |
19 |
| 3〜4kg |
0.9 |
17 |
| 2〜3kg |
0.4 |
13 |
| 1〜2kg |
0.5 |
8 |
Sanyo
AQUA |
9kg以下 |
1.1 |
30(※) |
| 6kg以下 |
0.9 |
25(※) |
| 3kg以下 |
0.6 |
20(※) |
・各会社に、電話で洗い時の水量を問い合わせた。
・National とTOSHIBAは洗剤量表示に対応する水量が分かった。
・Sanyoは詳しい水量は分からなかったので、目安を示した(※)。(洗濯物量は3段階ですが、水量は20〜30Lの間で5段階に切り替わるとのこと。)
表3は、汚れが少ない場合の使用量目安です。洗濯物の汚れが多く、表の石けん量で汚れ落ちが悪い場合は、石けんを使用量目安の3割程度まで増やすと洗浄力が上がります。ただ、泡が立ちすぎると、液が自動的に排出されてしまうことがありますので、入れすぎに注意する必要があります。部分的なひどい汚れには、石けん量を増やすよりも部分洗いが効果的です。冬場など水温が低いときは、残り湯を使用するか、温水機能を活用する必要があると思われます。
表3を参考にして、それぞれの機種と洗濯物量に応じて、粉石けんの量の適量を見つける必要があります。目安としては、少量の泡がたつ程度です。
表3 石けん量の目安
| 表示水位 |
洗い水量 |
洗剤量表示 |
ナチュロン
純粉石けん100 |
洗濯物量 |
| +高 |
36L |
1.3 |
45g |
8kg |
| 高 |
30L |
1.2 |
38g |
5〜8kg |
| 中 |
24L |
1.0 |
30g |
2.5〜5kg |
| 低 |
15L |
0.5 |
19g |
0.5〜2.5kg |
| 小 |
6L |
0.3 |
7.5g |
0.5kg |
(National ヒートポンプななめドラム NA-VR1000の場合)
●今後の課題
今回の実験で使用したドラム式洗濯機では、粉石けんでも液体石けんでも通常に使えることがわかりました。ただ、投入口が石けんに合わないだけですから、その旨注意すれば良いわけですが、洗濯機メーカーもそのように表示して欲しいと思います。まして、PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)で合成洗剤の成分が第一種化学物質に指定され、2008年にはGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)でもその危険有害性を商品に表示するようになった今、「石けんは使えません」、「合成洗剤のみ使えます」という表示の洗濯機を発売するのはいかがかと思います。早急に訂正するように申し入れをしているところですが、消費者もこうした声をあげていく必要があるのではないでしょうか。
また、少ない水で洗うドラム式洗濯機は、すすぎも少ない水量なので、合成洗剤で洗った場合、衣類に残留する界面活性剤が多いのではないかと懸念されます。この件については石けん技術開発協会(中小の石けんメーカーでつくっている協会)で現在実験中です。1年以内に結果が出る予定です。
(次回に続く)