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レポート

■石けんの原料油脂と環境

〜マレーシアのパーム視察報告〜

長谷川 治/太陽油脂(株)

2001年1月の朝日新聞記事「せっけんも地球を汚す?」がきっかけで、石けんと熱帯雨林破壊に関する議論が再燃しています。これについて、数年前にマレーシアのパーム農園を視察してきた長谷川治・太陽油脂(株)家庭品部部長が、2001年8月の洗剤環境科学研究会で行ったスライド発表と、小冊子「石けん・洗剤問題をよりよく理解するために」に掲載した『石けんの原料油脂問題と環境』より、まとめて報告します。

●――はじめに

石けんは、生分解性が良い、生態毒性がない、皮膚や人体にやさしいと昔から言われていますが、一部の新聞や本には「食糧になるべき油脂を石けん原料に使うべきではない」「パーム油(ヤシ油)を使うので熱帯雨林を破壊する」などと書かれたりしています。  そこで、実態はどうなっているのか、7年前のマレーシアパーム農園視察の経験をもとにどう考えればいいのか、改めて考察してみたいと思います。

1. 石油の歴史

石油は化石燃料と呼ばれる通り、5億年前の生物遺骸が固まったものと考えられていますが、この利用が始まってからまだ140年しか経っていません(1859年、アメリカのペンシルベニアで井戸を掘り、石油を採ることに成功)。そして本格的に大量に使われ出してまだ50年。日本でも高度成長時代に石油中心の経済になりました。そして石油は、プラスチックや様々な化学物質を作り出し、便利で「快適」な生活を可能にしましたが、一方で、様々な地球環境問題を引き起こし、今後、人類はどう生きるのか問われているのが現在であります。

2. 石油の限界

現時点では、石油の確認埋蔵量は約1兆バレル(1バレル=159リットル)であり、現在年間生産量がおよそ250億バレルなので、可採年数はあと40年といわれています。また、確認されていないものも含めて、人類が利用することができる石油の存在は、およそ2兆バレルといわれています。すると、今のままの使用量でいくとあと80年で無くなることになります。1) これまで人類は、石油をエネルギー源や化学製品の原料として大量消費してきましたが、今後は残された石油資源を大切に使うことがこれからの人類には求められており、今現在安いからといって、大量消費すべきでないことは明らかです。

3. 油脂

現在、世界の油脂の生産量は7974万トンであり、その内訳は大豆油2322万トン、パーム油1778万トン、なたね油1219万トンなどとなっています。主に食用に使われていますが、塗料や工業製品などの工業用にも使われています。2)(図1)

(図1)主要植物および海産物の
生産量(98/99予測)
  出典:
Counsolor and Attache Reports Official Statistics, Usda Estimates Date:July 1998

最近ではアブラヤシ(パーム樹)から採れるパーム油が増産され、世界の注目を浴びています。それは栽培面積あたりの収穫が大豆油の10倍と多いからです。主にマレーシア、インドネシアなどの熱帯地方で栽培されています。

マレーシア半島部では、ゴム園の跡にパーム樹が植えられています。一方、カリマンタン島(ボルネオ島)では木材の合板用として熱帯雨林が伐採され、その跡地にパーム樹が植えられています。

パーム油は日本には35万トン/年輸入されていますが、マレーシア全体の生産量の3%にすぎません。またその80%は食用です。石油と違って植物油は毎年1〜2回、パーム油は年12回採取され、太陽エネルギーが実となり種となり油脂になるので、再生産が可能なのです。

4. 石けんと油脂

紀元前3千年前に発見された石けんは、12世紀に工業的に生産されるようになって以来、人類の衛生面に多大に貢献してきました。その原料は最初、羊や牛の脂肪が使われていましたが、その後オリーブ油やヤシ油などの植物性が使われるようになりました。

日本の石けんメーカー(合成洗剤を作らず、石けんを主に作っている会社や共同組織)では、牛脂、豚脂、ヤシ油、パーム油、なたね油、大豆油、ひまわり油、米油など、用途に応じて多種類が使われており、また使用済みの廃油を回収して使用しています。一方、洗剤メーカー(石けんも製造しているが、主に合成洗剤を製造している会社)は、近年、(図2)の例のようにマレーシアにパーム油工場を建設し、パームアルコールや誘導体を作り、植物原料を謳い文句にした合成洗剤を発売し出しました。

<花  王>

社 名 進出国 設立年 出資比率 事業内容 生産能力
ピリピナス花王 フィリピン 1977年 花王 70%
アボティス 30%
ヤシ油ベースの高級アルコール、その誘導体、グリセリン アルコール
2万8千トン/年
ファッティ
ケミカル・マレーシア
マレーシア 1988年 花王 70%
パーコム 30%
パーム核油 ベースのメチルエスチルと高級アルコール、グリセリン アルコール
8万5千トン /年
花王オレオ
ケミカル・マレーシア
マレーシア 1991年 花王 100% エチレンビスアルキルアミド 1万トン/年
花王ソープ
マレーシア
マレーシア 1989年 花王 100% 化粧石けん 1万トン/年

(図2)東南アジアにおけるわが国メーカーのオレオケミカル事業の一部
(1995年7月末現在)出典:月刊油脂(1995年9月号)

5. マレーシア・パーム農園視察

7年前、婦人団体といっしょに朝日新聞家庭部のT記者をマレーシアのパーム視察に案内したことがあります。当時の写真から、そのパーム視察のようすを説明します。

マレーシアでは半島部とボルネオ島(カリマンタン島)とがありますが、パーム油の生産の多いのがマレー半島部です。各地歩きますと、このような農場があちこちに見えます。
これはサイムダービー社の農園に行ったときです。朝日新聞社のT記者もいっしょにおります。婦人民主クラブという団体も同行しましたが、その農場の工場長の説明を受けています。
これは背の高いパームの樹です。小さいうちは非常に背が低いですが、これは20年くらいたった樹です。葉の間にパームの実があります。これを柄の長い鎌で切り落とします。
パームの幹の下部分です。次々と葉が出て、その葉が落ちることを繰り返し、このようにごわごわの幹になっていきます。
パームは葉の付け根にだいたい毎月一房ずつ実がなっていきますので、パーム油は年に12回採れることになります。大豆、なたね、米などは年に1〜2回の収穫ですが、パーム油は約10〜12倍の収穫量があることになります。
農場で切り落とされたパームの実は農園に置いておくとすぐ酸化してしまうので、急いで近くの工場に運ばれ山と積まれます。ヤシ油はいわゆる皆さんご存じの大きいヤシの実から採れますが、パームは一房に梅の実くらいの粒が数百個なっていて、この実の果肉からパーム油が、中の種からパーム核油が採れます。
この農場では搾油した後に出る排水を貯蔵してメタンガスをつくり、それを燃やして自家発電を行っています。
搾油(圧搾)するとカス(残渣)が出ます。その残渣はボイラーの燃料として自家用蒸気に使っております。そして空果房は農場で樹の回りに置かれ、肥料として使われます。
葉も切り落とされると下に置かれ、自然に腐葉土となって肥料になります。
一部の工場で使われている廃液はそのままパイプで引いてきて、農園に撒かれて肥料になります。
マレーシアでは、どうしたら公害を起こさない農園を実現できるかということで、国をあげてPORIM(国立マレーシアパーム研究所)でさまざまな研究がなされています。我々も研究所の所長さんと会って説明を受けてきましたが、できるだけ無農薬で化学肥料を使わず、またネズミなどの害には天敵のミミズクを放すなどを指導しているとのことでした。
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このように、我々が視察した農園では、自然のサイクルに組み込まれた方法で栽培する努力がなされていることがわかりました。

実際に石けんに使われている油脂は主に牛脂、大豆油、米などさまざまなものがあります。当然パームやヤシが一部使われますが、それは日本に輸入された全体量から見れば、0.01%程度にすぎないということですから、その辺の考え方を改めて見る必要があると思います。

6. 全部石けんに代わったら

よく質問されることが、合成洗剤を全部石けんに切り替えたら食用油がなくなるではないかということですが、石けんは今少なく使う努力がされていますから、全部石けん派に変わったとしても、合成洗剤のように大量に使うのではなく、できるだけ少なく使うのであれば、今ある原料でじゅうぶんまかなえるということです。

日本に入っている食用油は現在220万トンといわれています。実際食用に使われて体に入るのが約100万トン。捨てられている廃食油が120万トンほどあると推定されます。そのうち業務用は回収されていますが、家庭用は一部の廃油石けんメーカーが使っている程度で、ほとんどは川や海に流されている。その辺を活用するだけでも石けんの全体量はじゅうぶん間に合うのではないかと思います。

合成洗剤をやめ、全部石けんに代わると原料油脂が暴騰するのではないかと心配する人もいますが、合成洗剤が発売される前は皆石けんだけで洗っていました。現に合成洗剤の一部にヤシ油、パーム油が使われたときも特に高騰したことはありませんでした。石けんが主流になるということは、社会全体が大量生産、大量消費を見直し、必要最小限の使用が当たり前となり、リサイクルも進められ、原料油の再生産を可能にする農業も再評価される時代になっているということになるのではないでしょうか。

7. 石けん原料

勿論、石けんの原料は全く問題がないわけではありません。大豆油やなたね油を使用すれば遺伝子組み換えを促進するといわれ、牛脂を使えば狂牛病、口蹄疫を流行らせるといわれ、パーム油を使えば熱帯雨林を破壊するといわれ、苛性ソーダを使えばダイオキシンのもとになる「塩ビ」を増加させるなどといわれますが、それは塩ビが普及しているからそのような製造方法で苛性ソーダができるのであって、苛性ソーダの製造方法には違う方法もあるわけです。そういうふうに問題の本質を見ていく必要があるのではないかと思います。

このように、これらの原料問題はそれ自体の問題であり、石けんに使用するから問題が起きるわけではありません。熱帯雨林の問題にしても、根本的には先進国の建築(合板使用)方法の問題であり、マレーシア国家の内部問題でもあります。日本でも輸入木材による合板主体の建築をやめ、国産材を使った建築を考えるべきであり、日本の林業を発展させることが根本的な解決の第一歩になるでしょう。

おわりに

有害汚染化学物質(Pollutant)を減らしていくために、排出・移動を管理する法律が環境省、厚生労働省、経済産業省によって全国の化学者を集めて審議され、その結果「PRTR法」として制定されて、2002年の4月より施行されました。(図3)のように、この法律の第一種化学物質として、6つの界面活性剤が指定されたことはとても重要なことです。【環境省化学物質ファクトシートから用途別(家庭用洗浄剤や界面活性剤、化粧品など)に検索できます】

(図3)PRTR法に基づく第一種指定化学物質の中の界面活性剤

No.24 アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(直鎖型)(C10〜14)
No.166 N.NジメチルドデシルアミンNオキシド
No.251 ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウムクロリド
No.307 ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル(C12〜15)
No.308 ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル
No.309 ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル

この根拠となったのがECETOC(European Centre for Ecotoxicology and Toxicology of Chemicals=欧州化学物質生態毒性・毒性センター)がまとめたTechnical Report(No.56)によるデータであり、独立行政法人製品評価技術基礎機構化学物質管理センターが発表しています。

PRTR法 第一種指定化学物質 政令番号 1-024
CAS番号  
物質名 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(アルキル基の炭素数が10から14までのもの及びその混合物に限る)
別名 LAS、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、ABS
生態毒性
Alkylbenzene Sulphonate,Linear(c15-16)
ECETOC
生物種 試験種別 試験期間 NOEC(mg/L) EC50(mg/L)
魚類 慢性毒性 21 d 0.3 -
生態毒性
Alkylbenzene Sulphonate,Linear(c14)
ECETOC
生物種 試験種別 試験期間 NOEC(mg/L) EC50(mg/L)
魚類 急性毒性 48 d - 0.59
PRTR法 第一種指定化学物質 政令番号1-307
CAS番号  
物質名 ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル(アルキル基の炭素数が12から15までのもの及びその混合物に限る)
別名 ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル(C12-15),AE,アルキルエトキシレート
生態毒性
Alkyl Ethoxylate(C12-13)
ECETOC
生物種 試験種別 試験期間 NOEC(mg/L) EC50(mg/L)
ミジンコ 慢性毒性 21 d 24  
生態毒性
Alkyl Ethoxylate(C14-15)
ECETOC
生物種 試験種別 試験期間 NOEC(mg/L) EC50(mg/L)
ミジンコ 慢性毒性 21 d   0.28

(図4)化学物質安全性(ハザード)評価
出典: 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター 横浜国立大学環境安全工学研究室・エコケミストリー研究会

環境に優しいと使用者が増えつつある石けんも、今後、社会的変化とともにより一層の改良が要求されてくるでしょうし、使う消費者もより賢い使い方を工夫しなければならないでしょう。

【参考資料】 1)「話題の化学物質100の知識」 P196 左巻建男編著 東京書籍 1999
2)「はて・なぜ・どうして クイズ石けんと合成洗剤」 P15 長谷川治著 合同出版 2000
3)「見てきましたパーム油の生産地 マレーシアスタディツアー報告集(1993.11.13〜21)」 婦人民主クラブ 1994

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